米国における就労ビザ(O1)を取得した話

少し前に米国で就労するためのO1ビザを取得しました。友人の何人かに内容を聞かれたことと、日本語による米国ビザ取得の話もあまりない為、ここに少し内容を残しておきます。どなたかの、今後の手助けになればと思います。

私はいくつかのきっかけが重なり、1年ほど前からある米国スタートアップでSenior Software Engineerとして働き始めました。米国における就労はビザの都合上できないため、ずっと日本の自宅から働いています。就労ビザ取得までには1年程度かかったことになります。流れとしてはH1への申請、その抽選に漏れてからのO1申請という形です。

ここでは、そのスタートアップで就労しはじめてO1ビザ取得までの全体の流れを残しておきます。O1ビザの取得にはUSCISが要件を出しています。この要件は見せ方など含めて移民弁護士との調整に依存することも多いので、ここではいくつか私の例に触れる程度にしておきます。また、ソフトウェアエンジニア以外の話はわからないので、ご了承ください。

私について

ソフトウェアエンジニアとして米国で就労する場合、H1あたりを取得することがおおいと思います。O1はH1に比べて条件が多く、申請者の状況に依存します。そのため、ここではまず私がどういう活動をしてきたのかに軽く触れます。

私は2011年からソフトウェアエンジニアとして働き始めています。ソフトウェアテスト・品質方面に関わりたくキャリアを歩み始め、テスト・QAエンジニアから今ではシニアソフトウェアエンジニアとして自動テスト・製品評価やモニタリングを支援する環境を提供するスタートアップで製品開発を行っています。今のところ、一貫してソフトウェアテスト・品質の話題を主軸に関わり続けていることになります。

私は日本国内におけるソフトウェア工学の修士号を持っています。ただ、博士号や国際論文への実績はありません。2016年程度から、ある自動化を支援するOSS[1]のコアメンバーに入り、申請時点においても貢献を続けていました。そのOSS繋がりで、申請前の段階ではいくつか海外カンファレンスで発表したり、日本国内における国際カンファレンスの運営にも関わりました。また、ソフトウェアテスト・品質方面の活動では、日本国内でいくつかのカンファレンスで発表させていただいています。日本語ではありますが、寄稿や共著もあります。

[1]: iOSやAndroidが主ですが、WindowsやmacOSなど多数の自動化ツールのハブとして機能するものです

H1とO1

H1やO1といったビザの種別の説明は省きます。こちらの公式ページを参照ください。

私もビザ申請前にO1ビザの取得可能性を調べていました。日本語、英語情報をみる限りでは、ソフトウェアエンジニアにおけるO1取得には博士課程の有無が言及されていることが多かったです。その為、私の実績で大丈夫なのか不安でしたが、結果としては大丈夫だったようです。いくつかおおまかな指標が要件に提示されていますが、実際に移民弁護士が提出した資料を見る限りでは国内や前職の実績以外にも、国際的な貢献も含めて実績があれば条件をクリアできるようです。

O1の申請において、H1同様にビザスポンサーが必要です。ビザの種類によって弁護士費用といった費用の差はありますが。O1では前職までの実績、公表されているような実績を提示し、米国にとって私が役に立つことを提示する必要があります。私は公表されているような実績の提示のみかと思っていましたが、弁護士の人曰く、前職までの社内含めた実績も必要とのことでした。例えば、何らかの賞を社内で取得していたり、社内で達成したこと、会社の名前を借りてカンファレンスなどの場で発表するなどです。

O1で特に重要なのは推薦書を集めることです。移民弁護士からもらったチェックリストには6~10程度の推薦書を、多様な人から集める必要があると書かれていました。集めた推薦書によって申請者の提出資料の信頼性を担保する形のようです。推薦者が何らかの立場を持っていたりすると良いようですが、それよりも申請者の実績を支援できるような立ち位置である/であったこと、その上で支援すると表明できる人であることのほうが単なる”距離のある立場を持つ人”よりも重要なようです。

私は2018年12月から現在の企業で働き始めたので、まずは時期的にも費用のかからないH1を受け、ダメだった時に他の手段(LかOなど)を考えようとなりました。結果、H1には選ばれませんでした。その為、O1の申請を進めることになりました。会社が移民弁護士などの対応を行ってくれた為、私は基本的に自身の実績や推薦状を書いてくれそうなツテなどを移民弁護士とやりとりしながら進めました。

時系列

H1からO1の流れを時系列でまとめます。

  • 2019年
    • 2、3月
      • H1の申請に向けた大学学部、修士時代の成績証明書、卒業証明書を取得
      • H1の申請
    • 6月頭
      • H1の抽選に漏れたとの報告をうける
    • 7月後半
      • LかOで申請が可能か検討する
      • 所属企業の規模など含め、O以外は申請しても望み薄と判断される
    • 8月前半
      • O1取得に向けて移民弁護士とやりとりを始める
        • 受け取ったチェックリストを元に、私のもつ様々な実績や証明書を提供する
        • 提出する資料は英語、もしくは英語訳(全文の直訳ではない)が必須なため英語情報をあつめる、もしくは英語訳を用意する
          • 私の多くは日本語資料であったため、証明書関係以外は自分で英語の要約をつけ、必要なものには移民弁護士側で翻訳署名書の取得などしてもらいました
          • 卒業論文のアブストラクト、証明書関係は日本の専門サービスを利用しました
    • 8月後半
      • ビザの推薦状のテンプレートを受け取る(2名)
    • 9月、10月
      • 日本語資料の英語要約、その共有
      • ビザの推薦状テンプレートを受け取る(追加の2名)
    • 11月後半
      • 合計4枚の推薦状が揃う
        • 日本に住む人から1枚、他3枚はカナダ、米国、英国に住む人たち
          • 日本国内の私の活動を支援してくれる人、前職の実績を支持してくれる人、OSSなどにかかわる日本国外(強いては米国においても)実績を支持してくれる人
    • 12月中盤
      • 申請
        • カレンダーで14日以内に返信を要求できるpremium processingを追加費用を支払い申請
          • 申請がない場合、3ヶ月程度以内に返信が来る(がいつ頃か具体的にはわからない)状態
          • 後になり知ったのですが、このpremium processingの申請は途中から申請することも可能なよう
  • 2020年
    • 1月2日
      • Approval noticeを受け取る
        • O1ビザの要件を満足していることを知らされる
    • 1月16日
      • 米国大使館で面接をうける
        • 大使館に到着から面接終了まで1時間程度(私と配偶者の2名)
    • 1月24日
      • ビザが貼り付けられたパスポートが届く
        • 大使館の時に提出した資料も全て返却される

こう見ると、申請物を用意することに時間がかかることがわかります。H1の結果報告がTwitterでちらほら見え始めた5月中頃から、念の為と思い少しずつO1に向けた情報をまとめ始めていました。そのため、日々の業務時間を削るようなことはありませんでしたが、それでも集めるために利用した時間的な負荷は高かったです。短期滞在目的だけであれば、H1でいけるようならそのほうが手間はかかりません。(取得の難しさは置いておいて。。。)

のちに実際に移民弁護士がまとめてくれたものをビザ承認後に読んでみると、公的な英語の表現としても学びになることが多くありました。なお、私の場合は実績証明のための資料は40枚程度の分量でした。

ポイント

すべてを事細かには確認していませんが、良かった点は以下のようです。

  • 多用な環境にいる人の推薦状を得ることができた
    • 推薦状のお願いができそうな人のリストを20人程度渡したのですが、結果的には4名だけにお願いする形になりました
    • 移民弁護士の人に軽く聞いてみると、私の実績の各々を、それぞれの背景を持つ人たちが支援してくれるようならそれで十分とのことでした
      • 例えば、極端な話、私に日本国内の実績しかなく、それらを日本に住んで、日本で活躍している人たちだけから推薦を受ける場合は数を持ってくる必要があるようです
  • 英語でちゃんと実績として利用できる参照可能な発表・活動がいくつかあった
    • 申請物として有効なのは英語だけ(もしくは英訳証明のついた英語訳)です。そのため、英語の資料、英語の発表動画、英語の発表レポートなど、英語で実績を提示できる資料がある方が少ない労力で実績を提示できます

なお、私の実績として共有したものの多くは公表されているもので、会社ブログ、カンファレンスの登壇、非営利団体における活動などです。2017年から2018年は英語が主の活動環境でした。(もう少し詳しく聞きたい知人は機会があった時に直接聞いてください)

出費

私の個人的な出費はpremium processingの他、私と配偶者含めた面接費用や英語訳にかけた費用です。おそらく合計で30万円程度でした。移民弁護士費用が高額だと思いますが、そこは会社が面倒をみてくれていたため、私は把握していません。

気をつけておくこと

O1の配偶者はO3というカテゴリでビザを取得することができます。ただ、このO3は米国に住んでいる間に収入を得ることができません。移民弁護士に米国で金銭を得ることがだめなのか?など質問したのですが、例えば日本の知人を手伝い、謝礼のような形で日本の口座にお金を受け取るような内容も良くないようです。そのため、米国に滞在中の期間は私の収入がすべてになるようです。その点では、EやL(Hも?)などのように確か届出を出すと多少の仕事が許可される物の方が全体的には良いのかもしれません。

最後に

私と妻はお互いに日本人の知人がほとんどいない地域に行くので、主にコミュニケーションの面で心配です。同僚(非日本語話者)やその家族だったり、英語でやりとりできる友人はOSS繋がりなどでいますが、日本語で話すこともほぼないですし。その点はこれからのことですが懸念点ではあります。特に、妻の話し相手になるような知人をみつけたいと思っています。英語、日本語、韓国語付近で。

ちなみに、保険などは会社が標準で提供してくれているものが配偶者にも適用可能なので、まずは大きく心配する必要はないかもしれません。他にも、401Kなどの話もあったりしますし。

主に参考にさせていただいたリンク

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