『多数決を疑う――社会的選択理論とは何か』を読んだ~ 分散システムにおける多数決 ~

多数決を疑う――社会的選択理論とは何かを読みました。

読んだ背景としては、教授が私の修士時代の修論の題材に関係していると教えてくれたから、でした。時期でいうと、4、5年前くらいの話ですね。

私が修士の時代、研究として分散コンピューティング環境化において、多数決がどれほど有効なのかの数学的な証明を行っていました。

想定した環境としては、ビザンチン障害。わかる人にはかなり有名な障害条件ですね。

ざっくりというと、分散コンピューティングを構成する計算機の集合において、自身以外が正しく動作しているか保証がない状態において、それらの集合全体として正しい計算結果を出すにはどのような条件が必要なのか?という問いです。

私は障害(正しく動作しない状態)が確率的に発生すると仮定し、その中で”正しく動作する”計算機が一定数以上あった場合、それらの集合は正しく動作することができるという命題を証明していました。その”一定数”とはどういう条件なのか?というものを。

人の経験則的に、多数決が1つの重要な要素として考えられていましたが、その多数決を基本としてどのくらい”正しく動作する”計算機が存在すれば、この命題を満足できるか?を証明していました。(証明したのですが、それは修論の発表以上いってないのですよね…5年たった今でも、出すべきというお声をかけていただきますが…)

その内容が、数学的な厳密な定義ではないにせよ書かれていたのがこの書籍です。ただ、この書籍が私の過去の論文に少しアドバイスを与えてくれました。少し修正してまた出そうかな…

多数決ではどのような条件の基に”多数と判断するか”という集約ルールが重要な要素です。そのルールを、コンドルセ・ヤングの最尤法、ボルダルール、(単純な)多数決、決選投票付き多数決と歴史的に研究されてきた幾つかの例を基に説明し、何が投票者の多数の意見を反映しているか?を反例を交えながら説明していました。

人は3択以上ある選択肢を多数決でちゃんと答えを出すことができないことは政治/経済界隈では有名な話です。主にはその話ですね。

いくつか述べたあと、確率的な仮定を交えて 64%多数決ルール を説明しています。これは、選挙を例に多数決で可決/否決を決めるとき、確率的な要素を踏まえた上で全体の63.2%を超えるだけ集めた意見が勝つ、という多数決のルールです。

私の修論ベースでいうと、分散システムのうち、63.2%を超える計算機が正しく動作するのであれば、残るシステムは正しく動作しなくてもシステム全体として正しく動作することができることを意味します。(すべて確率的に失敗する、という前提のもとです。実際は色々制約もあると思いますが。)
※私の証明がこの通りというわけではないです。仮定もことなるので、色々ことなる点もあります。

この書籍自体は何かの解を求めているのではなく、『多数決を疑うこと』に焦点を当てて論述を展開しているので、伝えたいことも『多数決を疑え』ということでした。

多数決と多様性は社会システムとして重要な、研究が進んでいる分野ですが、これはコンピュータの構成する分散システム環境において同様のモデリングが可能です。ここらへんの理論がここ最近、論理だけではなく実践/計測まで進んでいるので、もう少し経てば 確率的な失敗を前提とした、それでも正しく動作するような分散システム ができるかもしれませんね。それは人工知能でも十分に使えそうな理論な気がします。

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